冬山登山でもっとも注意すべき事は、雪崩である。
雪崩に遭ってしまうのは運の要素も大きいのだが、まえもって雪崩の兆候を見逃さないことでリスクを最小限にすることが出来る。
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冬山登山の事故・遭難で一番恐ろしい雪崩を回避する方法
雪崩の兆候と原理を知ろう
雪崩は、傾斜が急であれば急であるほど起きやすいのは当然だが30度以上~の傾斜角から用心した方がよい。
その斜面に24時間以内に12センチ以上の積雪があった場合に起こりやすい。
出来れば、1日待った方がいいだろう、また雪崩があった痕跡も見逃さないように。
過去に倒木の痕跡があったらその場所が雪崩が起きやすい可能性がある。
とにかく急な斜面で12センチ以上降った場所は避けた方がいい。
尾根の風下側に凍った波のように突き出した雪庇、北側の急斜面、昼間日光が直接当たっていた場所などは用心した方がいい。
常にいつ雪崩が起きても対処出来るような場所を選んで移動すること。
もし雪崩が起きたら!
雪崩がおきたら急斜面の場合、引力も手伝って下に逃げてしまいがちになるが極力左右どちらかに真横に急いで移動するよう意識する。
車が行き交う道路を横断するときの事を思い出して欲しい、斜めに横断するより真横にすばやく突っ切る方が車と衝突するリスクはぐんと減る。
<ちょっとティータイム> 私が尊敬する大好きな映画監督リドリー・スコットが作った「プロメテウス」という映画があるのだが、終盤巨大な宇宙船が墜落し転がりだすのだがその時に一人の女性キャラがその転がってくる宇宙船と同じ進行方向に逃げて最後は押しつぶされるシーンがあったのだが、思わず苦笑してしまった。あのシーンについて異論を投げかけるスタッフはいなかったのかと不思議でならない。 |
雪崩に巻き込まれたら!
もし間に合わず、巻き込まれてしまったら両腕を顔の前にもってきて、口に粉雪が入らないようにする。雪崩での死亡原因の多くが粉雪を吸い込んでの窒息死だ。
出来るだけ両腕で空間を作り息が出来る空間を作る。
何回転もしているので上下感覚が麻痺してる可能性があるので、まずは意識をハッキリさせ上下を確認する。
肢体と五感を働かせて、引力を確かめる。少しでも腕や脚を動かして少しの空間を作り手や腕など力を抜きだらんとさせたりして上下を確認しよう。
確認できたら上へ向かって泳ぐように脱出を試みる。
腰まで雪に埋もれてしまう状況では
よくしなる1メートルほどの枝を探しテニスラケットくらいのかんじきを作ろう。
両端を曲げて紐で結わいて、横に枝を渡し固定し間に網になるようなモノをくくりつける。
もっと簡易的に枝を靴底に這わせ、くくりつけてもいくらかは役に立つ。
ようは、設置面積を広げる工夫をするということだ。
雪に埋もれた状態で、無理して移動すると体力が持たない。
こんな感じでいいので、ぜひ作って頂きたい。
雪でシェルターを作る
山の天気は急激に変化する、例え今が晴れていても必ず変化する。
陽が落ち始めるとあっという間に闇に包まれ気温は急激に下がり、低体温症になる危険性が増す。
※(低体温症:身体の深部温度を維持するために手足への血流が減り凍傷の危険性が増す。)
明るいうちに、シェルターを作らなければならない、地形に応じたシェルターを臨機応変に作ることが大事だが辺り一面深い雪しかない場合は「かまくら」を作れば良い、実は雪は優れた断熱材だと言うことを覚えておこう。
かまくらの中では火もおこせ、一晩中暖かく過ごせる。
ただし、火をおこそうが起こすまいが必ず空気が循環するように換気口を作ること。
一酸化炭素で窒息することは珍しくないのだ。
シェルターがそのまま棺桶になってしまってはシャレにならない。
かまくらの作り方
積雪の深い場所を選び、かまくらを作ろうとする中心に荷物を置きシートなどを被せる。
そこを芯にして雪を被せていく、人の3倍くらいの空間を作ることをイメージして大きさを決める。
壁の厚さと同じ長さの枝などを外側からあらかじめ刺しておく。
風上を入り口にして、掘り進める内部をくりぬく。
先ほど刺した枝まで壁を削り取れば、暑さが均一なかまくらが出来る。
これをしないと、削りすぎたりして穴を開けるかも知れないからだ。
塹壕タイプ
横になれるくらいのスペースの穴を掘り天井部に枝など渡し雪で固める。
天井部は丈夫にしないと崩れたらそのまま埋葬されることになる。
針葉樹を利用する
針葉樹の葉をそのまま屋根にみたて、その下の方を掘り空間を作る。
このシェルターは大変優れているので、ぜひやってみてほしい。
自然物や地形、一時的な場合か長期用なのか?様々な状況を判断し作らなければたちまち体力を無駄に消耗してしまう。
※作業に当たっての注意点は、上着を何枚か脱ぎ汗だくにならないようにすることが大事で、もし汗だくになったら身体が後から冷え切ってしまう。
つねに乾いた状態にしておこう。
まとめ
毎年毎年冬山での遭難者は0になることはない、無人島に漂着するより遙かに確率は高いだろう。
何十年のベテランでさえ冬山の犠牲になったというニュースを聞くことがある。
その原因の一つはやはり天候の急変だろう、この急変の仕方は経験してみないと分からないが経験したらしたでやはり恐ろしいものだ。
ホワイトアウト状態を体験できる施設で経験してから、登山許可を出すなりそういうシステムが出来たら遭難者はかなり減ると思うのだが・・・。
- 急な斜面で12センチ以上降った場所は避ける
- 雪庇、北側の急斜面、昼間日光が直接当たっていた場所は要注意
- 雪崩がおきたら真横に素早く移動すること。
- かんじきを作る
- シェルターを陽が落ちないうちに作る